椅子に名入れをする理由
椅子に名入れをする理由
僕はお店をやっていたとき、名入れができる椅子が欲しかった。

あるとき、気がついたことがある。
テレビも、雑誌も、インスタグラムも、お店を撮影するときに外観を撮らない人はいないということだ。
なのに僕は、有効な手段を思いつかなかった。

有効な手段とは?
写真を撮られたときに、自然とお店の名前を映り込ませること。
いかにも「ここで写真を撮ってください」という映えを意識したものは、お店には置きたくなかった。
僕は、写真を撮ってほしいわけではなかったから。
お店を楽しみ、商品を味わい、豊かな時間を過ごしてほしいと思っていた。
その、思い出の記録としての写真なら許せる。
ただ、消費されるだけに使われるのは嫌だった。

だから、お店に置いて違和感がないものに、名入れができないかと考えた。
それが、この椅子。
これみよがしに宣伝をしたいわけではない。
でも、どうせ撮られるのなら、かっこよくお店の名前を写してほしい。
デザインも、値段も、佇まいも、ちょうどいい。
撮られるのが好きではない人は、心を鎮めるための言い訳に、椅子に名を。
撮られるのが好きな人こそ、椅子に名を。
Written by
福永英侍
PIECE OF SIGN 商品開発チーム。元「THE LATTE TOKYO」オーナー。約10年間休まず、渋谷区神山町で小さなコーヒースタンドを運営。当時の経験をもとに、店舗に寄り添う読み物も執筆中。
