【前編】〜自らの体調不良から見えた東洋医学の可能性〜
漢方薬店 LAOSI 開店ストーリー

PIECE OF SIGN のはじまりは、店舗オーナーとしての体験から

こんにちは、PIECE OF SIGN の音田です。


わたしたちは店舗向けのサインプロダクトをつくっています。
「おしゃれな看板屋」とイメージしていただくことの多いPIECE OF SIGNですが、ただの看板屋ではありません。
その原点は、はじめて自分でつくった「LAOSI」という漢方薬店にあります。


ひとりの店舗オーナーとして抱いた ”実感” が、PIECE OF SIGNの事業の核である「うつくしい店を助け、残す。」という想いに繋がっています。

今回は、店舗オーナーとしての開業エピソードを交えつつ、PIECE OF SIGN のはじまりを話したいと思います。

LAOSI のファサード

会社のバイアウトの進行中、“身体が止まった“

きっかけは、自身の体調不良からでした。

PIECE OF SIGNを始める前、私は bydesignという会社を経営しており、家具ブランド 「kanademono」 を展開していました。


その事業のバイアウトが進んでいた頃。
日々のやりとりや意思決定のプレッシャーから、 気づけば身体に異変が出始めていました。


微熱が続き、体がだるく、集中がうまく続かない。


病院に行ってもはっきりとした原因が分からず、じわじわと仕事のパフォーマンスに影響していく。そんな時期でした。


あるとき、知人に紹介された鍼灸の先生がいました。

その方は、長野から月1回だけ東京に来て、マンションの一室で施術をしている70代の先生でした。

半信半疑で施術を受けてみたところ、 驚くほど身体が軽くなったんです。

その後も漢方薬を処方してもらいつつ 数回通ううち、しつこい不調がすっかり抜けていきました。

東洋医学の可能性と、その「入りづらさ」

LAOSI の商品棚

この体験で、私は鍼や漢方の力を強く実感しました。


併せて先生から紹介された「貝原益軒 養生訓」という専門書を読みました。

特に印象的だったのは、 漢方というものが「統計」に基づいたロジックで成り立っている「統計の科学」だということ。

診断と体質に合わせて、効く処方が決まってくる。


「これはオカルトではなく、ちゃんとワークする仕組みなんだ」と確信しました。


一方で、 世の中にある漢方薬店には、いわゆる“老舗感”が強くて、入りづらい印象の店が多い。

「ホルマリン漬けの朝鮮人参」的なイメージもあれば、若い人や男性にとっては、なんとなく“自分ごとにならない“雰囲気もある。


こんなにもロジカルで効果のあるものにも関わらず、人々に浸透しない。
「本当にもったいない。」と、強く思いました。

私のように「本当は助かる人」が、入り口でつまずいているのではないかと。


これはanveilの社名の由来、「本質的な価値はあるけれど、わかりづらい物事のベールを取り除き(=unveil)わかりやすく広めていく」ことへの一歩でもありました。

「漢方の入門書」のようなお店をつくりたい

LAOSI の漢方薬膳茶

そこから漢方薬店「LAOSI」をつくる構想が動き出しました。


ターゲットは、漢方に触れたことがない若い世代や男性。

おしゃれで入りやすく、それでいて薬剤師さんはちゃんと本格派。


“見た目は易しく、でも中身は誠実に 東洋医学を届けられるお店にしたい”と考えました。


店舗デザインは、「養生」という思想をベースに、自然素材を多く取り入れました。
銅は昔から抗菌性があるとされており、そういった背景も含みながら素材選びを重ねました。
木や石、銅、真鍮といった素材にこだわり、落ち着いた空間に仕上げました。


結果として、“目立ちすぎないけれど、空間の中に芯のある静けさ“が生まれました。

そうしてしっかりとコンセプト設計したLAOSIですが、オープン当初は苦難の連続でした。

店舗の集客で大切なことを見落としていたんです。


後半の記事では、店舗オーナーとして直面した壁と、PIECE OF SIGN につながった経験についてお話しします。