10年続いた店を支えてくれたもの
10年続いた店を支えてくれたもの
矢印をどこに向けるのか

常連さんのために何ができるかと、これまで書いてきました。
情報発信も、毎日お店を開けるのも、その一つです。
なぜ、そこまで動けたのか。
理由は単純です。この人たちがいなかったら、10年もお店を続けられなかったからです。
売上を支えてもらっていたというだけでなく、気持ちの部分でも。
今日は、そんな話をしようと思います。
僕は、お店が閉店する理由を売上の問題だと思っていました。
実際、そういったお店が多いとは思いますが、僕が営業しながら感じていたのは、心の部分です。
お客様がほとんど来なかった開店初期は、この状態がいつまで続くのだろうかという、不安。
お客様が増え始めたけど消費されていると感じた中期は、何のためにやっているのかという、空虚。
お店が安定し、同じ日々の繰り返しに飽きが出始めた後期は、いつまでやるんだろうという、惰性。
自分がやりたくて始め、楽しい日々ではあるけれど、常に拭えない負の感情がありました。
その時に思ったのが、自分に矢印が向いていたということです。
不安も、空虚も、惰性も、自分のことしか考えていないから生まれていると。
誰のために、何のために。
今一度これを考えたとき、頭に浮かんだのは常連さんでした。
毎朝、仕事前に寄ってくれたあの人。
雨の日に必ず来てくれるあの人。
あの人が来てくれるからお店を開け、情報発信をし、会える場所を作ってあげたい。
ただこれだけの気持ちで、お店を閉める最後の数年間は営業をしていました。
自分のためだったなら、お店は5年も持たなかったでしょう。
この仕事は同じことの繰り返しなので、一部の熱狂的な「自分の作るものが好きだ」という人以外は、自分のためだけに続けるのは難しくなります。
お店を始めて数年が経ち、「なんか心が重いな」と感じたら、考えてみる。
誰のために、何のためになら、頑張れるか。
僕の知り合いに、働いているスタッフのために多店舗展開をしている人がいます。
この人は、入社してくれたスタッフのために頑張れる人なんでしょう。
また別の知り合いは、現場を離れ経営に専念をしました。
会社を大きくするのが楽しく、またそれがスタッフのためにもなるという判断です。
共通していたのは、始めた頃と同じ気持ちでい続けることの難しさ。
そしてその時々で考え、判断しているところ。
お店を始める前と後では、大きく気の持ちようが変わると思います。
「思っていたのと違った」
そう感じるのが普通で、誰もが思い描いていた通りに働いているわけではありません。
だからこそ、その時にどうするか。
思ってたのと違ったから辞める。
それも一つの手ではありますが、考え方を変えるだけで、楽しさは蘇りますからね。
僕は常連さんのためになら頑張れました。
この人たちに支えられ、助けられたからこそ、恩返しをしなければ。
そんな気持ちで働けた数年は、一番健やかだった気がします。
どうか、目的を見失っても諦めないでください。
探せば、見つかるものですから。
Written by
福永英侍
PIECE OF SIGN 商品開発チーム。元「THE LATTE TOKYO」オーナー。約10年間休まず、渋谷区神山町で小さなコーヒースタンドを運営。当時の経験をもとに、店舗に寄り添う読み物も執筆中。
